開催レポート 第6回「物流部会」 “止めない物流”をどうつくるか
災害・供給途絶を想定し、サプライチェーンレジリエンスを考える
自然災害や地政学リスク、サイバー攻撃、供給途絶など、サプライチェーンを取り巻くリスクが複雑化する中、BCPは「計画を策定する」だけでなく、実際に何が起こるのかを把握し、どのような対応を取るのかまで具体化しておくことが重要になっています。
第6回物流部会では、サプライチェーンの可視化やデジタルリハーサル、災害時の代替輸送などの事例をもとに、平時からどのようにリスクを把握し、有事の意思決定につなげるかを掘り下げました。
そして議論を進める中で浮かび上がったのが、物流やサプライチェーンの強靱化は、一社だけでは完結しないという課題です。物流会社、荷主、調達先、納品先など、企業を超えた情報共有や連携をどう実現するか。今回見えてきた課題を、次回の「企業間連携」の議論へつなげていきます。
【開催概要】
■ 開催概要
日時: 2026年月10日21日(水) 15:00~17:30
会場: 大手町プレイスホール&カンファレンス ( 東京都千代田区大手町二丁目3番1号 大手町プレイス (イーストタワー) 1F/2F)
■ テーマ
テーマ:「デジタルリハーサルによるレジリエントサプライチェーンの実現」
登壇者:富士通株式会社 Digital Manufacturing Group 平谷真智子
テーマ :「災害多発時代のロジスティクスマネジメント-必要なモノを必要な場所に供給し続けるためのレジリエンス強化のあり方と実践ー
登壇者:株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志 様
テーブルディスカッション
デジタルリハーサルによるレジリエントサプライチェーンの実現
「製造業としての富士通」のサプライチェーンレジリエンス
富士通はシステムを提供するSI企業である一方、AIサーバーなどのハードウェアを自ら製造する「製造業」でもあります。
平谷 真智子さんからは、その製造業としての立場から、富士通自身がサプライチェーンのレジリエンス向上にどのように取り組んでいるのかが紹介されました。
サプライチェーンの「どこで・何が起きているか」を把握する
紹介された事例では、素材サプライヤーから最終製品工場まで、世界各地のサプライヤーがつながる光ネットワーク装置の製造サプライチェーンをデジタル上で可視化。サプライヤーから得た情報に加え、災害情報や気象情報などの外部データ、在庫情報、顧客ビジネスへの影響度などを取り込み、「どこで何が起きていて、製造・供給にどのような影響があるのか」を確認できる仕組みが紹介されました。
さらに、直接の調達先だけではなく、その下位にある企業まで含めて拠点や依存関係を把握することで、特定地域への集中などサプライチェーン停止につながるリスクを確認し、拠点の被災時には代替調達先の検討につなげる考え方も示されました。
「見える化」で終わらせず、次の一手を考える
今回紹介された「サプライチェーンデジタルリハーサル」のポイントは、リスクを可視化するだけで終わらないことです。
災害や供給制約などが発生した場合に、
部品在庫を確保する
調達先を複数化する
生産・供給の優先順位を変更する
といった複数の施策を比較し、施策に必要なコストと供給停止などの回避効果を踏まえて、どの対応を選択すべきかを検討する考え方が紹介されました。
さらに、その判断をシミュレーションで終わらせず、最終的には調達計画など実際の業務へ反映していくことも重要なポイントとして示されました。
「何が起こるか」を予測するだけではなく、「起きたときにどう動くか」まで平時から考えておく。
デジタルを活用して有事を事前に“リハーサル”することが、サプライチェーンレジリエンスを高める一つのアプローチとして紹介されました。
「必要なものを、必要な場所へ届け続ける」ための備え
続いて小野塚さんからは、自然災害が多発する時代に、必要なものを必要な場所へ供給し続けるための物流マネジメントと、サプライチェーンのレジリエンス強化について紹介がありました。
BCPは「拠点」だけでなく「輸送ルート」まで見る
地震や水害による物流拠点の被災だけでなく、海外では渇水などによって船舶輸送に影響が生じるケースもあります。
そのため、自社拠点や調達先だけを見るのではなく、港湾や物流ルートを含め、商品が届くまでのサプライチェーン全体を捉える必要性が示されました。
また、荷主企業が災害時に物流事業者へ求める対応として、被害や出荷停止などの意思決定に必要な情報共有、道路寸断時などに備えた代替輸送手段の確保、物流拠点の強靱化などが紹介されました。
「トラックで運べない」なら、どう届けるか
具体例として紹介されたのが、南海トラフ地震発生時を想定した代替輸送の実証です。
西日本から東海・関東圏への供給を維持するため、敦賀港から新潟港まで製品を海上輸送し、そこから関東圏へ届ける代替ルートが検証されました。また、被災地での人手不足を想定し、RFIDを活用して現地での仕分け作業を簡略化する方法も試行されました。さらに、食品メーカー5社によって設立されたF-LINEでは、日本気象協会の「GoStop」を活用し、気象予測をもとに配送可否や遅延見込みを判断。風水害が予測される場合には、鉄道からトラックへの切り替えや配送ルート変更を検討する取り組みも紹介されました。
有事になってから考えるのでは遅い
災害時には、限られた人員や輸送能力の中で、すべての商品を通常どおり届けられるとは限りません。
そのため、供給能力が低下した場合に、「どの商品を、どの配送先へ優先的に届けるのか」を事前に決めておくこと、さらに代替物流拠点や燃料の確保まで想定しておくことの重要性が示されました。物流BCPを「計画書」にとどめず、実際に何が起こり、そのとき誰が何を判断するのかまで具体化しておくことが、物流を止めないための備えになります。
「自社の備え」だけでは解決できない
自社だけでは解決できない物流課題をどう乗り越えるか
情報提供を受けたテーブルディスカッションでは、参加企業がそれぞれの立場から、サプライチェーンや物流BCPにおける課題を共有しました。
議論の軸となったのは、「他社と共有することで解決に近づく情報は何か」「共同利用できる物流はあるか」「企業間での連携・共有・共同化を阻むものは何か」という問いです。共同配送や情報共有について、これまでの取り組みや今後の可能性も含めて意見が交わされました。
BCPの必要性はわかっていても「どこまで備えるか」が難しい
ディスカッションでは、BCPの重要性を認識していても、厳しい事業環境の中での予算化や優先順位付けが難しいという課題が共有されました。また、計画を策定するだけでなく、実際に災害が発生した際に自社事業へどの程度の影響が生じるのかを経営層が具体的に認識し、どこまで対策コストをかけるのかを判断することも課題として挙げられました。つまり、BCPを「必要だから準備する」のではなく、事業への影響と対策効果を見ながら、どこまで備えるのかを経営判断につなげていくことが重要になります。
データをつなぎたい。でも、つなぐこと自体が難しい
サプライチェーンを把握するためには、自社だけでなく取引先や物流事業者など、複数企業の情報をつないでいく必要があります。一方、ディスカッションでは、業界をまたいだデータの共通化が必要であるものの、機密情報やセキュリティの問題が企業間のデータ連携を難しくしているという課題も挙げられました。共同物流やデータ共有の必要性を感じていても、「何を共有するのか」「どこまで共有できるのか」という条件を整理しなければ、実際の連携にはつながりません。
共同物流は「一緒に運ぶ」だけでは実現しない
企業間での共同配送・情報共有については、その意義やこれまでの実施経験、今後の可能性について意見交換が行われました。その中では、企業や組織それぞれの事情や考え方が連携を進める上での障壁になり得ること、企業間で計画を立てて実行していく必要があることが議論されました。さらに、中小企業から大企業へ意見を伝えにくいといった関係性も踏まえ、企業間をつなぎ、プロジェクトをリードする存在の必要性や、コンソーシアムなどの可能性についても意見が出ました。
共同配送やデータ連携は、仕組みやシステムだけで実現するものではない。企業同士がどのような目的でつながり、誰が中心となって進めるのか。その「連携のあり方」まで考える必要性が見えてきました。
ディスカッションから見えてきた「次のテーマ」
今回の議論を通じて見えてきたのは、物流BCPやサプライチェーンレジリエンスを突き詰めていくと、一社だけでは解決できない領域に行き着くということです。災害時の代替輸送、共同配送、サプライチェーンの可視化、企業間のデータ共有。いずれも自社だけで完結させることは難しく、荷主、物流事業者、取引先などとの連携が重要になります。会議メモでも、第7回では今回議論された「一社では解決が難しい物流課題」をさらに深掘りし、共同物流、企業間のデータ連携、省人化など、企業の枠を超えた連携をテーマとして検討する方針が共有されています。
そこで次回は、「企業間で何を共有できるのか」「何を共同化できるのか」「それを阻む壁をどう越えていくのか」へ。
第6回で見えてきた課題を起点に、共同物流や企業間データ連携などの具体的な事例も交えながら、企業を超えた共同検討や具体的なテーマ創出へと議論を進めていきます。
「一社で備える」から「企業を超えて備える」へ
サプライチェーンを可視化し、起こり得るリスクを想定する。
代替調達や代替輸送などの対応策をあらかじめ検討する。
そして、さらにその先を考えていくと、自社だけでは解決できない領域が見えてきます。
代替輸送を行うにも、共同物流を実現するにも、サプライチェーン全体の状況を把握するにも、荷主、物流事業者、調達先、納品先など、企業を超えた連携が必要になります。今回のディスカッションでも、企業間での共同配送・情報共有や、それを妨げる障壁について議論されました。
そこで2027年1月14日の第7回物流部会では、第6回で見えてきた「一社では解決が難しい物流課題」をさらに深掘りし、企業間連携をテーマとして扱う方針です。
共同物流、企業間データ連携、省人化などを切り口に、「企業を超えて何ができるのか」を考え、共同検討や具体的なテーマ創出へ。
第6回で考えた「有事への備え」を、第7回では「企業を超えた備え・連携」へと発展させていきます。
